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鼻は何のためにあるのか?

鼻の機能は、おもに「呼吸器としての機能」と「感覚器(嗅覚)としての機能」に分けることができます。

 

香り、匂い、風味など、感覚器とくに嗅覚に関しては、日常生活の中で意識されることが多いのに対して、呼吸はほとんど意識されることがないのではないでしょうか。

 

私たちはまた、呼吸における鼻の役割について考えることもありません。

 

しかし、生命を維持する上では、鼻の「呼吸器としての機能」ほど大切なものはありません。

 

呼吸とは、息を吸ったり吐いたりする運動のことです。

 

息を吸うのは体の中に酸素を取り入れるため、そして息を吐くのは体の中で生成された二酸化炭素を吐き出すためです。

 

酸素を取り入れる理由は、私たちの体を構成する細胞の1つ1つが生存・活動するために、エネルギーを必要とするからです。

 

エネルギーは、細胞内に取り込まれた栄養(糖や脂肪)が、肺から血液を介して細胞内に運び込まれた酸素と反応(燃焼)することによって引き出されます。

 

この反応の後にカスとして残ったものが二酸化炭素と水です。

 

二酸化炭素を放置すると化学反応により体に有害な酸をつくり出すので、速やかに細胞の外に排出しなければなりません。

 

このため細胞内の二酸化炭素は再び血液を介して肺に集められ、体外に吐き出されるわけです。

 

こうした呼吸活動をスムーズに行なう鼻の「呼吸器としての機能」は3つあります。

 

1、肺を保護するために、体内に吸い込まれた空気中に含まれるほこりや細菌などの有害物質を取り除く「ろ過機能」。

 

2、肺に取り込まれた空気中の酸素が肺胞周囲の血液に移行しやすいよう、肺の環境を整える「加温・加湿機能」。

 

3、息を吸うときには肺の末端まで空気が行くように、また吐くときは肺に空気が長くとどまるよう、空気が気道(鼻、気管、そして気管支)を通過する時間を適度に遅らせる。

 

抵抗器としての機能

呼吸器としての鼻の主要な役割は、肺の内部環境を一定に保ち、肺を保護すると同時に酸素が血液に拡散しやすいような条件を整えることです。

 

たとえば私たちは灼熱の砂漠から北極など極寒の地に瞬時に移動しても、なにごともなく生きていけます。

 

これは鼻の機能によって、外の環境がどのように変化しようと肺の内部環境をほぼ一定に保つことができるからです。

 

そのために重要なのが、鼻のろ過、加温・加湿、そして抵抗器という3つの機能なのです。

有害物質を取り除く「ろ過機能」

私たちは1日に1~2万リットルもの空気を吸い込んでいます。

 

その中には異物や細菌、ウイルス、花粉などたくさんの粒子が含まれていますが、それらがろ過されずに肺に入り込むと、気管支の先にあるデリケートな肺胞の上皮組織が傷つけられ、肺胞の役割である酸素と二酸化炭素を交換するという機能(ガス交換)が低下してしまいます。

 

鼻は、空気中の粒子の大部分を取り除き、肺を保護する役目を担っているのです。

 

このろ過機能は、鼻腔の粘膜を被っている粘液層と、粘液層に突出した「線毛」(長さ5マイクロメートルの小さな毛)からなる「粘液・線毛運動システム」が基本となっています。

 

空気中に含まれている粒子のうち、大きな粒子は鼻毛で捉えられますが、ここを通過した粒子は、直径3〜5マイクロメートルの粒子であればその80パーセントが、また直径2マイクロメートルの粒子であればその60パーセントが、鼻腔の粘膜を被っている粘液層で捕捉されます。

 

この粘液層は、線毛の運動により、のど(咽頭)に向かって毎分6ミリメートルほどのスピードで、ベルトコンベアーのように連続的に移動しています【粘液層と線毛運動】。

 

線毛は、毎秒10~15回ほどのストロークで一方向に向かって脈動しており、わずか10分ほどで、鼻腔と副鼻腔全域の粘液をのどに排出するほどのパワーとスピードを有しています。

 

その結果、肺に入り込めるのは1マイクロメートル以下の微小な粒子だけとなります(ちなみに花粉症を引き起こす花粉は20~40マイクロメートル、細菌は0 ・3~5マイクロメートル)。

 

粘液層に捕捉された有害粒子は、線毛運動によって胃に移送され、胃酸によって無害化されるのです。

驚きの加温・加湿機能

こうした「ろ過機能」とともに重要なのは、鼻のエアーコンディショナー、空調機能とも言うべき温度や湿度を一定に保つ「加温・加湿機能」です。

 

鼻の奥行きは数センチです。空気がここを通過する時間はわずか1秒程度と、あっという間に通り過ぎてしまいます。

 

その間に空気は肺の内部環境(温度37度、湿度100パーセント)に近い状態まで整えられます。

 

たとえば、氷点下の冷気を吸い込んでも、空気がのどに達するまでに、30度近くまで上昇するとされています。

 

まさに驚異的な空調機能で肺を保護しているわけです。

 

この優れた機能は、鼻腔の構造と密接に関係しています。

 

鼻腔の内部には、「鼻甲介」と呼ばれる突起が複数あり、複雑な3次元構造をしています。

 

この構造により、横からみた鼻腔サイズのなんと約4倍もの表面積(約150平方センチメートル)をもつ鼻腔粘膜が、互いに接することなく収納されています。

 

この大きな表面積が、短時間の間に鼻腔を通過する空気に必要な温度と湿度を効率よく与え、空気中に含まれている粒子を効率よく粘膜表面に吸着させることを可能にしています。

 

また、調整された温度と湿度が、肺胞における効率のよいガス交換を可能にしているのです。

 

そして鼻は、これらの機能を発揮するうえでさらなるしかけを備えています。

 

それは、鼻腔粘膜の血管構造です。

 

鼻の粘膜は、もともと腫れやすいという特徴をもっています。

 

これは、血液をたっぷり溜め込みやすいよう、からまった毛糸のような構造をしている毛細血管(容積血管あるいは海綿静脈洞)をもっているからで、ちょっとしたことですぐに膨らんでしまうため「静脈性勃起組織」と呼ばれています。

 

静脈性勃起組織は、下鼻甲介の前端部と、これに対面する鼻中隔のあたりによく発育しダイナミックに膨らんだり(腫脹)、縮まったり(収縮)して、粘膜の厚みを変化させ、鼻腔を通過する空気の量を実に巧みに調節しています。

「抵抗器としての機能」で空気の量を調節

鼻のさらなる重要な役割は、肺の中に吸い込まれた空気中に含まれる酸素が血液に効率よく拡散できるように、空気の流量をしばる「抵抗器」として機能していることです。

 

空気が気道を通過する際に生じる抵抗を「気道抵抗」と言いますが、正常な人では、日中は鼻から息を吸っても(鼻呼吸)、日から息を吸っても(口呼吸)、気道抵抗はほぼ同じです。

 

しかし睡眠中には、鼻呼吸の方が気道抵抗は低く、楽に息ができることが実証されています。

 

つまり、鼻づまりのために呼吸がしにくい状態にならない限り、私たちはあらかじめ鼻から呼吸するように仕向けられているのです。

 

空気が鼻腔を通過する際に生じる抵抗を「鼻腔抵抗」と言います。この鼻腔抵抗によって、空気を吸うときに時間をかけた深い吸息ができ、胸郭を広げようとする筋肉のはたらきが高まり、胸腔内へ吸い込む力が増すため、より多くの肺胞の拡張を促します。

 

同時に、抵抗器のはたらきにより胸腔内の圧力が低下すると、肺胞周囲を流れる血流量も増加します。

 

また空気を吐くときには、鼻腔抵抗が肺の中の空気に圧力を加え、空気が肺胞内にとどまる時間を引き延ばします。

 

それにより多くの酸素が血液中に拡散し、肺胞の機能を十分に発揮することを可能にしています。

酸素の取り込みを促進させるその他の機能

鼻の呼吸反射

 

鼻から呼吸すると、日からの呼吸に比べ、呼吸の回数や肺が出し入れする空気の量が多いことが知られています。

 

また鼻からの呼吸は、のどの筋肉を緊張させて、のどを広げる機能をもっていることも確認されています。

 

鼻呼吸と口呼吸におけるこれらの差異は、鼻腔粘膜に存在するセンサーが空気の流入を感知することによって生じる局所性の反射と考えられています。

 

一酸化窒素の産生

 

さらにまた、鼻腔の粘膜と副鼻腔の粘膜には、肺の血管を拡張させ、血液への酸素の取り込みを促進させる一酸化窒素が多量につくり出されています。

 

鼻づまりによる鼻を経由しない口からの呼吸では、 一酸化窒素が十分に肺に取り込まれないため、鼻呼吸に比べて血中への酸素の取り込みが低下すると考えられています。

 

また一酸化窒素は、鼻腔と肺を結ぶ空中伝達物質として作用し、のどを広げるはたらきがあるとも考えられています。

 

つまり鼻からの呼吸は、これまでお伝えしてきた鼻腔内におけるさまざまな機能に加えて、鼻の呼吸反射と一酸化窒素を介した遠隔作用によっても、私たちの体が酸素を取り込みやすいような状況をサポートしているのです。

 

鼻の役割は、知れば知るほど生体活動を維持するうえで驚異的に有能な器官だということがおわかりいただけたかと思います。

 

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